たまに、身体に染み渡るような美味しい朝食に出会う。大抵の場合、そのメニューは奇抜ではなく、定番のものだ。定番で、でも少し工夫があるものが、実は一番美味しい料理なのではないか。
そういうものを18品目も揃えたのが、「築地本願寺カフェ Tsumugi」のモーニングだ。南高梅の梅干、湯葉いくらのせ、出汁で味付けされたトマト、里芋田楽、鴨の山椒焼き、揚げナスに卵焼きなどなど。料亭や小料理屋でこれだけの品を食べたら相当な値段になるし、お腹もすぐにいっぱいになってしまいそう。でも、ここでは朝食ならではの低価格で全メニューがちょっとずつ食べられる。
お粥が、起き抜けのお腹を優しく温めてくれる。昆布の佃煮や梅干しをお粥に入れるもの良いけれど、お惣菜が盛られた小皿に残った少しの出汁や調味料をお粥に注いでいくと、自分好みの味を作ることができる。お行儀はやや悪いかもしれないけれど、これくらいはきっと許されるだろう。口の中に残った風味を楽しみながら米や味噌汁、次の惣菜を楽しむのが和食の醍醐味でもあるし、精進料理を食べる僧侶が漬物で器を拭うのも見たことがある。美味しいものは他の味を引き立てるし、皿に残った余韻さえ無駄にしたくない気持ちにさせられるのだ。
どれも上品な味付けで、もたれることもない。ホテルのモーニングビュッフェも相当楽しいけれど、一日東京で遊んで、昼も夜も色々食べたいなら、この朝食以上の選択肢はないのではとさえ思う。
ここはお茶にもこだわりがある。 綺麗なガラスの容器にお湯をさしてもらい、じっと待っていると、お湯は綺麗な緑色に染まっていく。 抹茶ゼリーとお茶で締めようと思うのに、ついついお粥のお代わりを頼んでしまう。 「もう今日はこれで良いか、頑張って観光はしなくても、のんびり散歩でも十分だな」そんな心の余裕が生まれるのも、まだ朝だから。
カフェ内に流れ出した読経を聞きながら、外に出る。煩悩を満たす休日の、最高のスタート。
2828.tokyo
築地本願寺カフェ Tsumugi
サイト:https://www.cafe-tsumugi.jp
※WEBか電話で朝食時間(8:00〜10:30)の席予約も可能
電話:03-5565-5581
予約サイト:https://yoyaku.toreta.in/wacafetsumugi/#/
築地本願寺の敷地内にあるカフェ。和を意識して工夫を凝らしたメニューが揃っており、味付けも程よく、一般的なカフェとの差別化ができている。朝食メニュー「18品の朝ごはん」は人気のため、確実に食べたい場合は予約をした方が安心だ。傍らにはグッズが購入できるショップや多目的ルーム(訪問時は扉が開いていたうえ、読経や説法がスピーカーを通してカフェ内にも流れていた)が併設されている。一つ一つのメニューは少なめに盛られているが、ゆっくり楽しむと適量で、お粥のお代わりができるためしっかり食べたい人にも良い。海外からの旅行者のおもてなしに使うと盛り上がりそう。