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蛍をめぐって石垣島
About firefly in Ishigaki island



蛍は昆虫だから、明るいところで見たら怖いかも。 てことは、暗いところで蛍を見るのも怖いかも。 女の子たちはそんなことを言う。




実際は、薄暗い中を歩くうちに気分は盛り上がって、普段の感覚は遠くなり、夜になると蝉の声が聞こえなくなって、フクロウが鳴き出し、正体がわからない生き物の声まで響いて、全てがお伽話のように感じられてくる。




お伽話のなかにいるから、もう虫は怖くないし、一緒にいる人や、蛍目当ての知らない人たちと息を潜めて立って、この場所で合っているのかなとか、あそこにいるのは蛍かなとか、いや違ったとか、もう全部蛍に見えてくるねとか、言葉がどんどん出てくる。胸が高鳴るぶんだけ声はどんどん小さくなる。ビックリさせるときっと蛍は来てくれない気がするし、なんだかちょっといい子にしないとって気持ちが湧き上がってくる。いい子かどうかは蛍には関係ない。虫だから。いやもう頭の中では虫ってことは忘れちゃって、蛍はもう私の中でこれまで見たことがない光になっている。見たことがない光っていうのは、きっとなんだか精神的なものか、神聖なものを孕んでおり、困った、こんな気持ちは信仰に似ているから、少し怖くなってきて、でもその怖さは普通の怖さじゃなくて畏怖。畏怖は普通の怖さとどう違うのかなどと気にしてしまうのは振り返るからであって、あの時はそんな自分が溶けて消えていた。


ちらほらと光が見え始めると、なんかもっと見えているような。いや、見ているのってどういう感じなんだろう。微かな光を追っていると、これが確かだな、という、いつもなんとなく持っている気持ちにほころびが生まれていく。ところが、微かな光なんだけど、明らかに数がたくさんあるとなると、これは確かだって気もしてくる。確かかも、確かじゃないかもを行ったり来たりしている、その自分の揺れ方が、蛍がふんわり飛ぶ動きと重なって、お伽話が自分の身体の中に入ってきた。



写真キャプション:
雨後には蛍がたくさん見られるそうです。今回は数日間雨が続いた後の晴れ間、夕方に虹が出たのを見て急ぎバンナ公園に向かったのが大当たりで、かなりの数が駐車場の方まで飛んでおり、割合明るい場所でも瞬く蛍を見ることができました。


2828.tokyo


調査地:バンナ公園

場所:石垣市登野城

沖縄県庁によるサイト:https://www.pref.okinawa.jp/site/doboku/koen/ryokuchi/bannakouen.html へのリンク

説明:
日本最南端の森林公園。バンナ岳を中心として広がり、5つのゾーンに分かれている。園内は広大なため、園内の移動もGoogleマップを見るのが便利。蛍が見られるのは西口から入るDゾーンで、駐車場は第二駐車場が最寄りとなる。駐車場からは「ホタル街道入口」などの標識を頼りに進む。蛍は通常水場で見られ、バンナ公園では小川付近がスポット。ただ、おそらく歩道から影になっているところにも水場があると思われる。のべ2日間の訪問のうち、1日目はホタル街道沿いの小川で、2日目は小川を通り過ぎて階段を上がり、ホタル滝展望台の手前までの場所で観察ができた。